カーテンを閉め切った真っ暗な部屋でウトウトしながら、お腹も空いてきた。そろそろ起きるか。。時計のランプをつけると、正午を少し回ったところだ。
ボタンで自動式のカーテンを開くと、やや曇天だが暑苦しそうな空がまぶしい。電話には赤いランプが点滅している。メッセージを聞くと、大学の先輩Bだった。東京外大中国語学科の7年上で日系企業の香港現地法人社長をしている。二人とも酒は飲まないが、B氏の一時帰国中、中国文学の教授を囲む飲み会で知り合った。最近の香港事情について食事をしながら話を聞かせてほしいと、ネコがお願いしたところ快諾してくれた。親切で几帳面な性格のB氏から、予定通り今夜6時に尖沙咀(チムサーチョイ)の店で会いましょう、という確認のメッセージだった。
尖沙咀は東京でいえば新宿のような感じだろうか。香港随一の繁華街で飲食店がひしめいている。夜は海鮮料理なので、昼はパスタにでもしようか。すでにかなり空腹だが、ランチで外に出るにも髪はボサボサ、長旅で疲れて顔もぼんやりしている。今すぐにシャワーを浴びて身づくろいをするのは、ハードルが高い。
ルームサービスの重たいメニューに手を伸ばし、ビニールの表紙を開いて眺める。サービス料が20%かかり、思わず電卓で税サ込の合計料金を為替レートも考慮して計算する。パスタとサラダを合わせて、日本円で3800円くらいだろうか。
クリントン政権の報道官George Stephanopoulosの回顧録"All Too Human"にこんなシーンがある。ホテルの一室に作戦会議のためスタッフが集まり、食事の時間になったのでルームサービスを取ることにした。ヒラリーが目を輝かせて「これは子供の頃の最高の贅沢だった」とメニューを見つめ、そこにいた全員が最高の重大事のように注文を選んだ。
少し歩けばMarks & Spencerがあり、ほとんど変わらない食事内容を4分の1程度の値段で済ますこともできる。だが泥のように疲れていて部屋から出たくなかった。意を決して受話器を上げ、パスタとサラダを注文する。
40分ほどでドアのベルが鳴り、ボーイがカートを押して部屋に入り、テーブルに白いクロスを敷き、銀の器のフタを空けてパスタとサラダ、小皿に盛ったパン、バターを置く。
グリルしたホタテ貝とグリーンアスパラの乗ったホワイトソースのパスタ、ベビーリーフと赤かぶのスライス、プチトマトのサラダである。パンもちょうどよく温まっている。考えてみればホタテも海鮮だったが、夜はエビでも食べることにしよう。
テレビをつけるとホテル内の案内ビデオが流れる。リモコンのチャンネルを押していくとBBC、CNN、さらには中国国営CCTVの全てのチャンネルが網羅されているようだ。

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