Saturday, February 6, 2021

第一章 ロンドン(11)

 欧州に滞在しているとドイツの勢力を肌で感じる。

 LSE大学院に留学中、毎週大量の読書が課された。とても一人の学生が読み切れる量ではない。学部を卒業したばかりの若いドイツ人女子学生がクラス全員に呼びかけ、Reading Groupをつくった。彼女が各人に課題図書と要約作成の作業を振り分け、締め切りまでにGoogleのフォルダーにアップロードするよう指示した。要約の分量、ファイル名の書き方などの詳細も指定し、おかげで全員が効率的に課題図書の要点を理解することができた。

 そして驚いたことに彼女自身は要約作成の作業をせず、全体を仕切っただけだった。ただ韓国人の女子学生だけはグループに入りながら最後まで要約をアップロードせず、級友たちの作業の果実を取っただけだった。ドイツ人は怒りのメールを何度も出したが、韓国人学生は徹底的に無視した。

 いろいろな意味で興味深い経験だったが、職務経験もないのに上級管理職のような手腕を持つドイツ人学生には度肝を抜かれた。

 こうした優秀さという背景もあるのだろうか。欧州人の間では今でもドイツへの恐怖の念があるようだ。ロンドンっ子のニコは、トラファルガー広場をネコと散歩しながら言った。

「このライオン像にはドイツに空爆された跡がずっと残っていたが、最近補修されたようだ。歴史の証拠として残しておくべきだった」

 また、ある時期にネコはドイツ人の男性と知り合い、イタリアを一緒に旅行するためフィレンツェで落ち合う計画を立てていた。ところが彼は行けなくなり、ネコは休暇の予定を変更できなかったため、仕方なく一人でホテルにチェックインした。

「まったくドイツ人の友達が急に来られなくなったのよ」とグチると、受付の若い男性は言った。

「そんなの全然かまわないよ! ドイツ人なんてヒトラーじゃないか!! 世界で最高の男はイタリア人だよ!!! 今夜はあなたの部屋に行くよ!!!!!」

 これがうわさのイタリア人男性なのか。。とネコは驚きながらも笑ってしまった。そして20代に見える若い男性の口から思わずヒトラーという名前が出るほど、欧州では今でも第二次大戦の爪痕が残っているのかと感じた。

 そう考えていくと、たしかにEUはドイツが仕切っている。フランスはその片腕といった位置づけだろうか。長年にわたり独仏国境問題の舞台となってきたストラスブールに欧州議会本部はある。

 ドイツがコロナを擬人化できたということは、コロナをあやつることもできるのだろうか。そうなるとイギリスで突如として変異株が登場した背景には、EU離脱のお仕置きという意味合いもあるのか?

No comments:

Post a Comment