Saturday, February 20, 2021

第二章 香港(3)

  CCTVのアナウンサーが話すマンダリンは、犬が甲高くキャンキャン鳴いているようだ。北朝鮮の女性民族衣装をまとったニュースキャスターを彷彿とさせる。寝起きのボーっとした頭にはきつい。共産圏の特徴かと言えば、旧共産圏のロシア語はボソボソとしている。

 エコノミー症候群ではないものの、長距離フライトでずっと座りっぱなしだった。食事を済ませてシャワーを浴びる前に、ホテルの屋外プールで泳ぐことにした。ヤシの木が茂り、いかにもリゾート風のプールサイドだが、高層建築に囲まれた場所にあり風通しが悪いため、どうしてもカビくさい。香港やタイが好きな人は多いが、高温多湿が苦手なネコは東南アジアには住めないと感じる。

 夕方になり、ホテルの自動ドアを出ると、少しは蒸し暑さがやわらいでいる。地下鉄湾仔(ワンチャイ)駅につながっている高架式の通路を歩いて行く。橋の下には混雑した道路と元気よく茂ったヤシの木の街路樹があり、いかにも香港らしい猥雑な建物がそびえ立っている。

 オクトパスカードを感知させて駅に入り、ラッシュ時の地下鉄に乗る。コスモポリタンな大都市ではあるが、ロンドンほど人種や肌の色の多様性はなく、アジア系が多い。尖沙咀(チムサーチョイ)で降りて地上に出る。少し歩くとまもなく、水槽をならべた海鮮料理店が見えてくる。しばし水槽内で泳ぐ魚を見つめたあと、ドアを押して店の中に入る。

 薄い縁の眼鏡をかけたB氏が手を振る。

「ご無沙汰しています。お忙しい中ありがとうございます」

「元気そうだね。香港は何年振りくらい?」

「そうですね、かれこれ7、8年になります」

 ウエイトレスがテーブルにやってきて、英語で話しかける。表向きには中国化は進んでいるものの、香港人は中国へのアレルギーが強い。マンダリンを話すとぼったくられることもあるので、用事は英語で済ます。

 注文のエビが運ばれてくる。

「コロナは本当に大変でしたね。あんなことが起きるとは。。でも欧米と比べて、香港・マカオを含めて中国の対応は全体としてはよかったんじゃないですか?」と、ネコはエビをつつきながら、それとなく様子を伺う。

「そうだね。かなり入念に準備されたマニュアルがあったっていう噂もある」

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